工場内での資材や部品、完成品などの移動を「構内物流(工場内物流)」と呼びます。構内物流(工場内物流)は必要なときに必要なモノを必要な数量搬送することが求められ、工場全体の生産性向上を左右する重要な要素です。本記事では、構内物流(工場内物流)工程やその課題、改善ポイントなどを解説します。
構内物流(工場内物流)とは
構内物流とは、工場内において
物流基地から生産ラインからへ、ある工程から次の工程といったように、モノを移動・運搬することです。製造の現場ではさまざまなラインや工程があり、工程間でモノを運びながら製品を作っていきます。製造ラインに必要な部品や原材料が届かないと生産が滞ってしまうため、効率的にモノを運搬することは工場全体の生産性向上にとって不可欠です。そのため、効率的な構内物流を実現することが求められます。なお、構内物流は「工場内物流」とも呼ばれています。
構内物流(工場内物流)の種類
製造業の構内物流(工場内物流)には大きく分けて以下3つの種類があります。
調達物流
材料や部品などの調達時に発生する物流作業です。サプライヤーなどの仕入れ先から必要な部品や資材、原材料などを調達し倉庫に保管します。
いわゆる「ジャストインタイム化」に伴い、必要なものを、必要なときに、必要な量確保する必要性が高まっている昨今では、調達物流も重要なフェーズとなっています。
販売物流
工場で生産された完成品の出荷に伴う物流作業です。物流基地や再送センターから卸・小売店などに輸送される形のほか、ECの普及などにより直接消費者へと配送する形も増えています。
「物流」と言う場合、この販売物流を指すことが一般的です。消費者が求めるタイミングで配送する必要があることから、販売物流の効率化も重要になっています。
回収物流
製品や容器、不良品の回収や再資源化にかかわる物流作業です。製造業は生産や販売だけでなく、こうした回収の工程を担うこともあります。
近年は環境問題への対応策として循環型社会を推進する機運が高まっていることから、回収物流の重要性も増しています。
構内物流(工場内物流)の工程とは
構内物流(工場内物流)には、以下5つの工程があります。
受け入れ・入庫
サプライヤーから届いた
部品や資材、原材料を受け入れ、物流基地などに保管する工程です。受け入れたモノと発注内容が一致しているか確認したうえで、倉庫内の棚などに保管していきます、入庫時の荷物の運搬や積み上げの際に、AGF(無人搬送フォークリフト)やパレタイズロボットといった機器を利用することで作業者の負担を軽減し、効率的な作業を実現できます。
AGFやパレタイザーについては以下の記事で詳しく解説しています。
保管
原材料・部品・資材などはすぐに製造ラインには運ばれず、一定期間倉庫にとどまることが一般的です。この工程が「保管」です。工場で製造された製品も、製品在庫として保管されます。
保管されている在庫は不足や必要以上の余剰が発生しないよう、常に入荷日や製造日、数量などを正確に把握し、需給調整を行う必要があります。しかし、人手による作業だけではどうしてもミスの発生を避けられません。そこで、入庫から保管、出庫までの一連のフローを一元管理したり倉庫業務を効率的にマネジメントしたりできる、WMS・自動倉庫といったソリューションを導入することがおすすめです。
保管作業を効率化するソリューションについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ピッキング(出庫)
必要な材料や部品などを保管場所から取り出し、製造ラインへ届ける工程をピッキングと言います。指示書の内容に基づいて、必要なモノを必要な数だけ正確にピッキングすることが求められます。ピッキングのために広い倉庫内を作業者が動き回っていると、肉体的な負担増加や属人化といった課題が生じることが珍しくありません。
そこで、モノを自動で運搬してくれるロボットであるAGV・AMRや、ピッキングを効率化するデジタルピッキングシステムといったソリューションが求められます。
ピッキングをサポートするロボットについては以下の記事で詳しく解説しています。
搬送
上記のような各工程間では、モノの搬送作業が常に発生しています。必要なときに必要なモノをスムーズに搬送できないと、次の工程がストップしてしまうなど大きな影響が生じるため、正確かつ効率的な搬送の実現が重要になります。
人手に頼った搬送では効率が低下する恐れがあることから、工程間搬送においても自動でモノを運搬できるAGV・AMRが役に立ちます。
工程間搬送に活用できるAGV・AMRの詳細については、以下の記事をご覧ください。
出荷
完成後の製品は倉庫などで保管され、必要なタイミングで出荷されます。出荷前には梱包や仕分けといった作業を行うケースもあります。出荷においてもモノの運搬作業を伴うため、作業負担を軽減するAGFやパレタイザーといったソリューションを活用することがおすすめです。
AGFやパレタイザーの詳細については、以下の記事をご覧ください。
構内物流(工場内物流)の課題
構内物流が効率化されていない工場では、さまざまな問題が頻繁に発生します。 たとえば、資材や部品の保管場所が定まっておらず、保管スペースに無駄が生じていたり、探し出すのに苦労したりする課題が挙げられます。部品などが過剰に供給されるために作り過ぎの原因となり、余計な在庫が発生し、搬出も頻繁に行わなければならないといったことも課題です。
こうした課題を放置していると余計なコストや手間がかかってしまうため、改善が必要です。構内物流(工場内物流)改善の流れ
構内物流(工場内物流)改善する際には、以下3つを意識することが重要です。
製造現場の効率化を意識する
まずは製造現場が効率化を意識することが重要です。
無駄や遅延が生じている箇所・工程を洗い出すことで効率化のポイントを把握できるようになります。たとえば、入庫のルールが統一されておらず、必要なモノを必要なときに搬送できていないのであれば、先出し先入れを徹底できるように入庫ルールや保管方法をきちんと整理する必要があるでしょう。また、保管先の棚のレイアウトをより効率的なものへと見直すことなども考えられます。
モノづくりのフローを管理する
倉庫から生産ラインへの資材や部品の供給、生産ラインでの各工程、また完成品の保管から出荷など、構内物流(工場内物流)の一連のフローを全体として管理することも必要です。これにより、たとえば
製品や資材の搬送において不必要な移動や待ち時間が発生しているケースなど、停滞が生じている箇所を把握できるようになります。こうした全体のフローを管理するためには、自動倉庫やWMSといった倉庫管理をデジタル化するソリューションが必要となる場合もあります。
構内物流自体の効率化を行う
効率化すべきポイントを洗い出し、フローを管理できるようになった後は、
構内物流(工場内物流)そのものの効率化に着手します。
工場内のレイアウト改善や、正しい手順を徹底するためのマニュアルの整備と作業員の教育など、効率化を実現する方法にはさまざまなものがあります。導入コストに見合う効果ができるのであれば、システムやロボットなど新たなソリューションの導入も有効です。こうした取り組みと通じて、作業者の負担軽減や業務の正確性向上なども図ることができます。
構内物流(工場内物流)改善事例の紹介
国内アルミサッシのトップメーカーであるYKK AP株式会社様では、社内の物流センターにおいて小部品の種類が多く、従来使用していた棚に置ききれず、パレットや棚以外の場所で保管していたために、作業者の移動距離が伸び、業務効率の低下や身体的負担が生じていました。一部の作業者のみが保管されている場所を把握しているため、管理が属人化されてしまい作業時間のばらつきが出ていることも課題でした。
そこで、
部品保管場所から作業ステーションの工程間搬送に棚搬送AGVを導入し、さらにWCSと連携させることで自動化を実現。作業者が長い距離を歩く必要がなくなり、業務効率や身体的負担を軽減したほか、属人化していたピッキング作業の平準化が進み、誰でも作業可能になりました。
構内物流(工場内物流)改善はLOGITOまで
第一実業では、製造業や倉庫業等の企業様向けに物流の自動化を図るソリューションサービス「LOGITO」を提供しています。
自動倉庫やAMR(自律走行搬送ロボット)などの各種ソリューションをお客様の課題に合わせた形でご提案しており、構内物流(工場内物流)の改善を支援します。また、工場内の現場分析から機器・設備のコーディネート、据付後のアフターフォローまでワンストップでご支援しており、国内外のグループ会社との連携により迅速かつ最適なソリューションを提供することで、工場内の搬送作業における省人化を効果的に実現します。
以下の資料では、物流の自動化をはじめ構内物流(工場内物流)を改善するための進め方などを詳しく解説していますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。
LOGITO 運営事務局
LOGITO 運営事務局では、全世界17カ国34拠点のグローバルネットワークにて培ったノウハウを生かし、物流自動化に関するトレンド・業界動向からノウハウ、成功事例まで、物流自動化の実践に役立つ様々な情報をお届けします。