COLUMN

「屋外は自動化できない」を変える ――拠点間搬送の新たな選択肢とは



「屋外は自動化できない」を変える ――拠点間搬送の新たな選択肢とは

~自動化が進む今、物流の次のボトルネックを解消するには~

目次

▼関連資料



1. すでに屋内は自動化された。では、その次は?

昨今、物流や製造の現場では、AMR(自動走行搬送ロボット)やAGV(無人搬送車)による屋内の自動化が当たり前になりつつあります。倉庫内のピッキング、パレット搬送、ラック収納までがロボットに任され、人がほとんど介在しない現場も登場しています。

一方で、次なる自動化のステージとして多くの企業が直面しているのが、「屋外搬送」の課題です。屋内の搬送はAMRやAGVの導入により大きく前進しましたが、建屋間や屋外ヤードをまたぐ移動については、天候・地形・通信環境などの影響が大きく、未だ人手に頼らざるを得ないケースが少なくありません

実際に、経済産業省の2024年レポートでは、配送ロボットの社会実装における課題として「公道・屋外での走行性能や安全性への懸念」が指摘されており【※出典①】、また富士経済の調査では、「屋外走行に対応できるロボティクスの需要」が年々高まっていることが報告されています【※出典②】。

つまり、自動化の取り組みが屋外で“立ち止まっている”ことが、いま多くの現場で共通するリアルな課題となっているのです。

出典元:出典①:経済産業省「配送ロボットの社会実装に向けた取組状況」(2024年2月)
    出典②:富士経済『2024年 ロボティクスソリューション市場の現状と将来展望』(2024年5月) 

2. 屋外搬送の現場が抱える3つの課題

① 雨・雪・風――天候に弱い搬送機器

一般に、屋内専用として設計された搬送ロボットは、「防水性」や「耐風・耐寒性能」といった屋外特有の環境条件に対する備えが限定的であるため、 濡れた地面や雪の積もった坂道、強風の吹くヤードなどでは、安定した稼働が難しいとされます

一部の現場では、 「既存の屋内用機体を仮設的に屋外で使用する」という対応が取られているケースもあるようです。

その結果として、 雨天時にはブルーシートでロボットを覆う、 あるいは搬送の一部を人手で代替するなど、 本来の自動化目的とは異なる運用が一時的に発生する場合もあると報告されています。
こうした状況は、 屋外対応機の普及前段階において、現場の制約下で実施されている “やむを得ない暫定的な措置”として捉えられることもあります。

② 通信とナビゲーションの不安定さ

屋外では、壁や建屋による電波干渉、GPSの精度低下、RTK(Real‑Time Kinematic:衛星測位システムによるリアルタイム高精度補正)の切断といった問題が起こりやすく、搬送ルート上で一時的に自己位置を見失い、無人搬送車が停止してしまう事例も確認されています

屋外では、壁や建屋による電波の干渉、GPSの精度低下、そしてRTK(Real-Time Kinematic)の信号切断といった問題が発生しやすくなります。その結果、搬送ルート上で無人搬送車が一時的に自己位置を見失い、停止してしまうケースも確認されています。

このような課題に対応するため、近年では、RTK-GNSSやLiDAR、IMUといった複数のセンサーを組み合わせる技術が導入され、屋外でも安定した自律走行を実現しつつあります。

しかしながら、トンネルや坂道、建屋間といった屋外特有の構造や地形は、依然としてセンサー性能や通信の安定性に影響を与える要因となっています。そのため、先進技術を導入しても走行の安定性に関するリスクが完全には解消されていないのが現状です。

それでも、トンネル・坂道・建屋間といった屋外特有の構造的・地形的な要因が、センサーの性能や通信環境に影響を与え、走行の安定性を損なうリスクがあることは、先進製品においても共通の技術的課題として残されています。

③ 作業の属人化と人手頼みの受け渡し

工場間の受け渡しや、搬送機と倉庫側のタイミングが“人の判断に頼っている”ため、ロボット導入後も現場に人が張り付く必要があり、受け渡し作業が属人化して自動化が完結しないといった課題が多く報告されています。

実際、2024年のレビュー研究では、「人とAGVとの協働環境では、安全性や効率向上の一方で、『人を介在させる必要』が重課題として浮上しており、人手依存が根強い」との分析もあります【※出典③】。

出典元:出典③: Agnieszka A. Tubis ほか『Interaction between a Human and an AGV System in a Shared Workspace—A Literature Review Identifying Research Areas』(2024)

3. 屋外搬送自動化の新しい方向性とは?

これらの課題を乗り越えるために、国内外の先進現場では次のようなアプローチが導入が進んでいます。

全天候型・屋外対応の搬送プラットフォーム

  • 強風・雨天・積雪にも耐える防水・防塵シャーシ

  • 地面状況に応じたトルク制御・グリップ補正

  • 夜間走行でも視認可能なセーフティライト&音声アラート

複合センサーによる安定した自律走行

  • GPS/RTKに加え、LiDAR(レーザー距離センサー)、IMU(慣性計測装置)、そしてカメラ映像による周囲認識を組み合わせ、 ロボット自身が位置を正確に把握しながら、自律的にルートを判断

  • SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と地図生成を同時に行う技術)による自己位置特定とルート更新

  • 坂道や段差を検知し、自動で減速・回避判断

遠隔での監視とタスク最適化

  • クラウドプラットフォームと接続し、PCやタブレットから遠隔制御

  • 工場間搬送のタスク割当やスケジューリングをAIが最適化

  • 他ロボットとの同時制御・すれ違いにも対応

4. 現場で実際に起きている変化

屋外自動化の技術は、すでに国内の現場でも広がりを見せており、運用面での成果も出始めています。

ケース1:自動車工場における構内搬送の自動化

  • 工場間(約1km)を往復する搬送ルートに6トンクラスの無人牽引車を導入

  • 荷積み・荷下ろし・自動充電までをすべて無人化し、日常的に4名分の作業者を削減

  • 安全面でも、フォークリフトによる接触リスクが大幅に軽減

ケース2:空港内の貨物輸送

  • 40T無人牽引搬送で、長距離トンネル/高速エリアでも自律走行

  • GPS+RTK+IMUのハイブリッドナビを採用し、
     「人による運転よりも正確かつ安定している」という評価を獲得

ケース3:エネルギー企業における資材搬送プロジェクト

  • 4トントラクターとカスタマイズ資材トレーラを組み合わせた無人搬送システムを導入。

  • 屋外での悪天候に対応するため、トレーラにはシェルターと手動レインカーテンドアを装備。

  • 1台のトラクターで2台のトレーラを牽引し、搬送途中の資材ロスをゼロ化

  • タブレット端末による遠隔操作や自動充電機能も活用し、作業員を大幅に節約

  • 投資回収期間は約2年を想定(ROI指標0.55を想定)

 
※本事例の一部には、実際の導入現場から得られたヒアリングや協力ベンダーの技術資料に基づく内容が含まれています。

 

5. それでも、「何を導入すればいいかわからない」

導入を検討するにあたっては、 「自社の環境に本当に適合するのか」「どの機種・方式を選べばよいのか」といった点で、判断に迷われるケースも少なくありません。

たとえば以下のような現場条件では、特に慎重な検討が求められます。

  • 倉庫と工場の間に距離がある

  • 雨天時のみ人手で対応している搬送工程がある

  • 建屋間にスロープや段差などの高低差がある

こうした課題は、製品スペックだけでは判断が難しい場合もあるため、物理的・運用的な制約を踏まえた検証が必要です。そこで重要なのが、自社の条件に即して比較・検証する”ための材料を持つことです。

まとめ

自動化の取り組みは着実に進展しています。しかしながら、「屋外搬送」は依然として多くの現場にとって乗り越えるべき最後の課題のひとつです。

貴社におかれましても同様の課題が顕在化しているようであれば 、本資料が次のステップを検討するための一助となれば幸いです。

▼関連資料

LOGITO 運営事務局

LOGITO 運営事務局

LOGITO 運営事務局では、全世界17カ国34拠点のグローバルネットワークにて培ったノウハウを生かし、物流自動化に関するトレンド・業界動向からノウハウ、成功事例まで、物流自動化の実践に役立つ様々な情報をお届けします。

CONTACT

LOGITO(ロジト)は第一実業株式会社が提供する物流自動化ソリューションです

フォームからのお問い合わせの場合、土日祝日を除き、お問い合わせいただいてから1日以内に当方よりご連絡させていただきます。
ご連絡先を入力いただく際には、お間違いのないよう十分お気をつけください。

ページの
先頭へ戻る