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『製造業 DX 』の課題とは?注目されている背景・導入事例を徹底解説!【前編】



製造業
DXは企業の競争力強化と持続的成長に不可欠な取り組みで、トヨタ自動車やIHIなど、実際にDXを導入して成果を上げている企業も多くあります。

本記事では、製造業DXが注目される背景や課題、実現した場合のメリットを詳しく解説するとともに、製造業DXを企業が導入する際のポイントや推進ステップについて具体的に紹介します

製造業DXの全体像と実践方法を網羅的にお伝えし、製造業界が直面している人手不足や急速な環境変化といった課題解決方法や製造業DXのメリットを自社に取り入れる方法についても言及するので、実際に導入するビジョンの明確化に役立てられるでしょう。

目次


1. 製造業DXとは? 



 経済産業省によると、DX(デジタルトランスフォーメーション)はデータやデジタル技術を用いることで、
 顧客目線で物やサービスに新たな価値を生み出していくビジネスモデルや企業文化
を指します。

 当然ながら、最適なDXは各業種やビジネスで求められるものが異なり、製造業に当てはめたものは製造業DX
 呼ばれています。

 製造業DXで用いられる技術分野は多様で、それぞれ適した分野で活用されることで、生産性や品質管理、従業員や
 運用コスト削減をしつつ商品開発や新たなサービスの提供に役立てられています。

1-1 DXの定義と重要性

 経済産業省は、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会
 のニーズを基 に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業
 文化・風土 を変革し、競争上の優位性を確立すること」 と定義しています。

 つまり、DXは、デジタル技術やデータを単に使うだけではなく、ビジネスモデルや企業文化に組みこんで変革し
 新な価値を生み出すことで競争力を生み出すことです。

 これを製造業に当てはめたものが製造業DXで、データやデジタル技術の活用によって製造プロセス・事業モデル
 ・製品を根本的に変革し、競争力を高める取り組み
を指しています。

 製造業におけるDXの重要性は以下の点にあります。

  ・生産性の向上

  ・品質管理の精度向上

  ・コスト削減

  ・新たな付加価値の創出

  ・グローバル競争力の強化

1-2 製造業DXの主要な技術要素

 製造業DXを実現するための主要な技術要素には、以下のようなものがあります。



1-3 製造業DXの具体的な適用分野

 製造業DXは、以下のような分野で具体的に適用されています。

 1.3.1 スマートファクトリー
  IoTAIを活用して工場全体をデジタル化し、生産性を飛躍的に向上させる取り組みです。リアルタイムでの
  生産状況の把握や、予測型の保守管理が可能になります。

 1.3.2 デジタルツイン
  現実の製造プロセスやシステムをデジタル空間上に再現し、シミュレーションや最適化を行う技術です。製品
  開発や生産計画の効率化に貢献します。

 1.3.3 サプライチェーン最適化
  調達から生産、物流、販売までのサプライチェーン全体をデジタル化し、リアルタイムでの在庫管理や需要
  予測を可能にします。

 1.3.4 カスタマイズ生産
  デジタル技術を活用して、顧客ニーズに応じた柔軟な生産体制を構築し、多品種少量生産やパーソナライズ製品
  の提供を実現します。

1-4 製造業DXの導入効果

 製造業におけるDXの導入は、以下のような効果が期待できます。

  ・生産性の向上:自動化やAI活用による大幅な生産効率の大幅な向上

  ・品質管理の高度化:センサーやAIによるリアルタイム品質管理で不良品率を低減

  ・コスト削減:エネルギー使用の最適化や予測保全による設備稼働率の向上

  ・新たな付加価値創出:データ分析に基づく新製品開発や新サービスの提供

  ・従業員の働き方改革:デジタル技術による業務効率化と創造的業務への注力

 経済産業省のレポート(p.39)では、DXに成功した製造業企業の中には2年間で50.%以上の生産性向上を達成した
 企業や20%のマーケティング費用の削減を達成した企業も紹介しています。

1-5 製造業DXの国際動向

 ・ドイツ:「インダストリー4.0」として、製造業のデジタル化を国家戦略として推進

 ・アメリカ:「インダストリアル・インターネット」構想のもと、GEなど大手企業が主導

 ・中国:「中国製造2025」計画で製造業の高度化とデジタル化を推進

 ・日本:「Connected Industries」構想で、データを介した企業間連携を促進

 日本の製造業が国際競争力を維持・強化するためには、これらの世界的なDXの潮流に遅れることなく、積極的に
 取り組むことが不可欠です。

 しかし、2015年のものづくり白書によると、日本のIoTの取り組み状況は欧米に比べて大きく遅れているという
 ことが指摘されています。

2. 製造業DXの課題とは? 

 製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進には、様々な課題が存在します。
 これらの課題を理解して適切に対処することが、成功に向けた重要なステップとなります。

2-1 外的要因の急速な変化への対応

 製造業を取り巻く環境は急速に変化しており、それに対応することが大きな課題となっています。

  ・技術革新のスピード加速

  ・グローバル競争の激化

  ・顧客ニーズの多様化

 これらの変化に迅速に対応するためには、柔軟な組織体制と迅速な意思決定プロセスが必要です。従来の硬直的な
 組織構造や意思決定プロセスを見直し、より俊敏な組織への転換が求められています

2-2 取り巻く経済環境の変化

 経済環境の変化も製造業DXの推進に大きな影響を与えています。

  ・原材料価格の変動

  ・為替レートの変動

  ・新興国市場の成長

 これらの変化に対応するためには、リアルタイムでのデータ分析と予測が不可欠です

 しかし、多くの製造業企業では、このようなデータ分析のための体制やスキルが不足しているのが現状です。

 中小企業基盤整備機構によるアンケート調査では、ITに関わる人材不足が28.1%DX推進に携わる人材不足が
 27.2%と人材不足が上位を占めており、中小企業におけるDX導入の足かせとなってしまっていることが分か
 ります。

2-3 人手不足

 日本の製造業は深刻な人手不足に直面しています。 
 パーソル総合研究所によると、2030年には製造業で約38万人の人材が不足すると予測されています。

 この課題に対処するためには、以下のような取り組みが必要です。

  ・自動化・省人化の推進

  ・AI・IoTの活用による生産性向上

  ・働き方改革による労働環境の改善

2-4 データ活用の障壁

 製造業におけるDXの成功には、データの効果的な活用が不可欠です。
 しかし、多くの企業がデータ活用に関する以下のような課題に直面しています。


 2.4.1
データの分散と統合の困難さ
  製造業では、生産設備、品質管理システム、在庫管理システムなど、多様なシステムが存在し、それぞれが
  データを生成しています。これらの分散したデータを統合し、有効活用することが大きな課題となっています

 2.4.2 データの質と一貫性
  異なるシステムから収集されたデータは、しばしば形式や定義が異なり、一貫性に欠けることがあります。
  データの品質を確保し、一貫性のあるデータ分析を行うことが重要です

 2.4.3 リアルタイムデータ処理の必要性
  製造現場では、リアルタイムでのデータ収集と分析が求められます。しかし、多くの企業ではこのようなリアル
  タイム処理に対応できる体制が整っていません。

2-5 最適なIT投資

 DXを推進するためには、適切なIT投資が不可欠です。しかし、多くの製造業企業は以下のような課題を抱えて
 います。

 2.5.1 投資対効果(ROI)の見極め
  DXへの投資は大規模になることが多く、事前にその効果を正確に見積もることは困難です。
  投資の優先順位付けと、各投資のROIを適切に評価することが重要です

 2.5.2 既存システムとの統合 
  多くの製造業企業では、長年使用してきたレガシーシステムが存在します。
  新しいデジタル技術をこれらの既存システムと統合することは、技術的にも運用面でも大きな課題となります。

 2.5.3 セキュリティリスクへの対応
  DXの推進に伴い、サイバーセキュリティリスクも増大します。
  製造プロセスのデジタル化と同時に、適切なセキュリティ対策を講じることが不可欠です

  取引先や技術情報に関する情報漏えいやデータの損失等の被害は、トレンドマイクロ社の調査によると3割近く
  にも上ります。

  DX導入時にはセキュリティについての見直しも必要です。

2-6 ツール選定の困難さ

 DXを推進するためには、適切なツールの選定が重要です。しかし、ツール選定にも、以下のような課題があり
 ます。

 2.6.1 ツールの多様性
  市場には多種多様なDXツールが存在しています。
  その中から自社のニーズと特性に合った適切なツールを見極めることは非常に困難です。

 2.6.2 ベンダーロックインのリスク
  特定のベンダーのツールに過度に依存すると、将来的な柔軟性が失われる可能性があります。
  ベンダーロックインを避けつつ、効果的なツール選定を行うことが課題となっています。

 2.6.3 ツールの相互運用性
  選定したツール同士が適切に連携できることも重要です。
  異なるベンダーのツール間でのデータ連携や統合が課題となることがあります

  適切なツールの選定は、持続した運用に繋がります。しかし、選定ツールは多岐に渡っているため、時には専門
  家への相談が必要となるでしょう。

2-7 DX人材の採用・育成

 DXを成功させるためには、適切な人材の確保が不可欠です。
 しかし、多くの製造業企業が以下のような人材関連の課題に直面しています。

 2.7.1 DX人材の不足
  
みずほ総研の調査では、日本のIT人材不足は2030年には最大約79万人に達すると予測されています。 
  特に、DXを推進できる高度な人材の不足が深刻です。

 2.7.2 既存社員のスキルアップ
  既存の従業員のデジタルスキルを向上させることも大きな課題です
  従来の業務知識とデジタル技術の両方に精通した人材の育成が求められています。

 2.7.3 デジタル文化の醸成
  DXの成功には、組織全体でのデジタル文化の醸成が不可欠です。
  しかし、特に伝統的な製造業企業では、このような文化変革を実現することが難しい場合があります。

2-8 製造業DXの課題のまとめ

 以上が製造業DXが現在直面している課題です。
 分かりやすいよう、下記に一覧を掲載します。



 これらの課題に総合的に取り組むことで、製造業企業はDXを効果的に推進し、競争力を強化することができます。
 各企業が自社の状況を適切に分析し、優先順位を付けながら段階的にDXを進めていくことが重要です

3. DXによって実現できること 

 製造業におけるDXは、課題が多いものの導入すれば企業の競争力を大幅に向上させる可能性を秘めています。
 以下では、DXによって実現できる主要な効果について詳しく解説します。

3-1 生産性の向上

 DXの導入により、製造プロセスの効率化と生産性の大幅な向上が期待できます。

 3.1.1 自動化による効率化
  ロボットやAIの活用により、従来人間が行っていた作業の多くを自動化することが可能になります。
  これにより、生産ラインの稼働時間を延長し、人為的ミスを減少させることができます。

 3.1.2 予知保全の実現
  IoTセンサーとAI分析を組み合わせることで、設備の故障を事前に予測し、適切なタイミングでメンテナンスを
  行うことができます。
  これにより、計画外の設備停止を最小限に抑え、稼働率を向上させることが可能です。

3-2 人手不足の解消

 深刻化する人手不足問題に対して、DXは有効な解決策となります。

 3.2.1 作業の自動化
  ロボットやAIによる作業の自動化により、人手に依存する工程を減らすことができます。
  特に、危険な作業や単純繰り返し作業をロボットに任せることで、労働環境の改善と人材の有効活用が
  可能になります。

 3.2.2 リモートワークの実現
  クラウドシステムやVR/AR技術の導入により、遠隔地からの作業監視や指示が可能になります。
  これにより、地理的制約を越えた人材の活用が実現し、人手不足の解消に寄与します。

3-3 脱属人化

 DXの推進により、特定の個人に依存しない製造体制の構築が可能になります。

 3.3.1 ノウハウのデジタル化
  熟練工の技術やノウハウをデジタル化し、AIやVR/AR技術を用いて若手従業員への効率的な技術伝承を実現する
  ことができます。
  これにより、技能の継承問題を解決し、高品質な製品製造を持続的に行うことが可能になります。

 3.3.2 標準化とマニュアル化
  作業プロセスをデジタル化し、詳細なマニュアルを作成することで、誰でも一定水準以上の作業を行えるよう
  になります。
  これにより、人材の流動性に対応し、安定した生産体制を維持することができます。

3-4 情報の可視化

 DXによって、製造プロセス全体の情報をリアルタイムで可視化することが可能になります。

 3.4.1 生産状況のリアルタイム把握
  IoTセンサーとビッグデータ分析を組み合わせることで、生産ラインの稼働状況や在庫状況をリアルタイムで
  把握できるようになります。
  これにより、迅速な意思決定と生産調整が可能になります。

 3.4.2 品質管理の高度化
  AIを活用した画像認識技術により、製品の品質チェックを自動化し、高精度で効率的な品質管理を実現すること
  ができます。
  これにより、不良品の発生を最小限に抑え、顧客満足度の向上につながります。

3-5 顧客満足度の向上

 DXの導入により、顧客ニーズに柔軟に対応し、満足度を高めることが可能になります。

 3.5.1 カスタマイズ生産の実現
  デジタル技術を活用することで、多品種少量生産やカスタマイズ製品の効率的な生産が可能になります。
  これにより、個々の顧客ニーズに合わせた製品提供が実現し、顧客満足度の向上につながります。

 3.5.2 納期短縮と正確な納期予測
  生産プロセスの最適化とリアルタイムの進捗管理により、納期の大幅な短縮と正確な納期予測が可能になり
  ます。
  これにより、顧客の期待に応え、信頼関係を強化することができます。

3-6 競争優位性の獲得

 DXの推進により、業界内での競争優位性を獲得することができます。

 3.6.1 新製品開発の加速
  デジタルツインやシミュレーション技術を活用することで、製品開発のサイクルを大幅に短縮することが
  できます。
  これにより、市場ニーズの変化に迅速に対応し、競合他社に先駆けて新製品を投入することが可能になります。

 3.6.2 データ駆動型の経営判断
  ビッグデータ分析とAIを活用することで、市場動向や顧客ニーズを正確に把握し、的確な経営判断を下すことが
  可能になります。
  これにより、リスクを最小限に抑えつつ、新たなビジネスチャンスを見出すことができます。

 3.6.3 サプライチェーンの最適化
  ブロックチェーン技術やAIを活用することで、サプライチェーン全体の可視化と最適化が可能になります。
  これにより、在庫管理の効率化やリードタイムの短縮、コスト削減を実現し、競争力を高めることができます。

3-7 製造業DXの成功事例

 実際の成功事例を紹介し、どのようにDXが実現されたかを詳しく解説します。

 3.7.1 事例1: 自動化による生産効率の向上
  ある自動車部品メーカーでは、製造ラインにAIとロボットを導入することで、生産効率が30%向上しました。
  自動化により、作業の精度が向上し、製品の品質が安定しました。

 3.7.2 事例2: リモート監視によるコスト削減
  ある電子機器メーカーでは、IoTセンサーとクラウドシステムを活用して生産設備のリモート監視を実現しま
  した。
  これにより、メンテナンスコストが20%削減され、故障による生産停止も減少しました。

 3.7.3 事例3: 顧客ニーズに応えるカスタマイズ生産
  あるファッションメーカーでは、デジタル技術を活用して顧客のカスタマイズ要求に応える生産体制を整え
  ました。
  これにより、顧客満足度が大幅に向上し、売上も増加しました。



次回コラムで、DX化を導入し活用している企業事例、成功するためのポイントをご紹介していきます。

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