
人手不足や人件費の高騰などを背景に、工場では人材を確保することが難しくなっています。そこで重要になるのが工場の省人化です。省人化を進めるためには既存の業務の無駄を洗い出した上で、最新の設備導入による生産プロセスの自動化が必要になります。本記事では、工場内の自動化が必要な理由や、省人化を実現するための搬送工程の自動化などについて解説します。
工場の省人化とは

工場の省人化とは、
生産工程や組み立て工程において、作業を見直して無駄な工程を削減し、1工程あたりの作業員数を減少させることをいいます。単純にフローを見直して作業を効率化し、人員を削減する方法もありますが、機械化やコンピュータの導入に実現することが一般的です。
近年はAIをはじめとするデジタル技術の進歩によって、より高度な工程を機械が代替する動きも見られるなど、省人化がさらに進展しやすい状況になっています。
省人化と省力化の違い
省人化にと似た概念に「省力化」があります。省力化とは作業の無駄を削減したり、機械を導入したりすることで作業員の業務負担を減らす取り組みのことです。
省人化と省力化はどちらも業務を効率化し、生産性を高める方法ですが、
1つの工程で作業員を1人以上削減できるかという点に違いがあります。仮に省力化によって1人当たりの作業量を1割削減できたとしても、それにより人員を削減できなければ「省人化」とはいいません。つまり、省力化は作業負担の軽減に重きを置き、必ずしも人員の削減は意図していない一方、省人化は人員の削減を重視するということです。
工場の省人化が必要な理由

工場の省人化自体は古くから多くの現場で進められてきましたが、近年は以下の理由からより強く求められるようになってきました。
人手不足への対応
少子高齢化による労働人口減少により、
現在の日本では多くの業界で人手不足が深刻化しています。この傾向は今後さらに加速すると予想され、求人をかけてもなかなか人が集まらない状況で事業を継続・成長させるために、省力化の推進は不可欠です。
製造・物流現場での人手不足解消のためのヒントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
求人だけでは人手不足は解決されない! 製造・物流現場の人手不足を改善するためのヒント人件費の高騰
先述の人手不足を背景に
企業の人材獲得競争が激化していることで、人件費は右肩上がりで上昇しています。近年は全国各地で最低賃金が引き上げられており、このことも人件費上昇に拍車をかけています。実際に、2023年には初めて全国平均の最低賃金が1,000円を超えました(※)。特に人口の流出が深刻な地方では最低賃金の引き上げ幅が大きく、企業の人件費の負担増大は避けられません。
加えて、技能を持つ人材は育成に時間がかかることから人手不足になりやすく、より人件費が高騰しやすい構造になっています。
こうしたことから、人件費の負担を少しでも抑えるため省人化がこれまで以上に求められています。
出典:
厚生労働省HP 生産性の向上
省人化を推進するためには、
新たな機械・ロボットなどの生産設備導入による生産性向上が不可欠です。人手で行っていた作業を自動化することで生産工程が大幅にスピードアップし、少ない人員でこれまで以上の生産が可能となります。機械は一度導入すれば耐用年数に達するまで稼働し続けるため、中長期的な省人化を見込めます。
熟練したスタッフ退職リスク
高度なスキルを持つ熟練したスタッフに依存した生産工程では、その人が退職してしまうと生産を維持できなくなってしまいます。近年は特に、スタッフの高齢化と若年層への技術・技能承継が課題となっており、この課題を解消するために機械の導入による省人化に取り組む企業が増えています。
工場省人化の進め方(流れ)
工場での省人化は、以下の流れに沿って進めていきます。
既存業務の分析・見直し
はじめに、既存の生産プロセスを詳細に分析し、
どのプロセスで無駄が生じているのか、多くの人手を要している工程はどこかといった点を把握し、見直すべきプロセスを洗い出します。高い精度が要求される工程も機械化によりミスを削減できるため、省人化の対象となり得ます。各工程を細分化し、非効率な作業などを把握して改善方針を示すことが大切です。
作業の標準化
非効率な工程を洗い出し、業務フローの見直しなどを通じて無駄を削減した後には、作業の標準化を行います。人手で行っている工程では、作業員によってやり方や熟練度が異なり、作業の効率性に大きな差があることが珍しくありません。
そこで、
各作業員の作業工程を分析して最良の方法を明らかにし、それをマニュアル化(文書化)することで誰でも同じレベルで作業に従事できるようになります。これにより業務が効率化し、省人化につながります。
最新技術や設備導入による自動化
上記のような無駄の洗い出しや標準化といった既存設備を維持した状態での省人化に関しては、過去から繰り返し行っている企業も多く、すでに改善の余地がないケースもあります。
その場合、最新技術や設備の導入による自動化を通じた省人化が効果的です。ロボット、コンベア、センサー、制御システムなど、多様な設備・ソリューションがある中でどれが必要になるのか選定する必要がありますが、
特に搬送工程の自動化に取り組めていない企業が多く見られます。工場の省人化で取り組むべき搬送の自動化
多くの工場では搬送の工程があり、この搬送を自動化することで大幅な省人化を実現できます。
工程間搬送の自動化
工場では各工程と工程の間で、部品や資材、仕掛品などを搬送する必要があります。この搬送作業を人手に頼っていると作業員の業務負荷が大きく、多くの人員を要するため、生産性向上や人手不足への対応のため自動化による省人化が求められます。
そこで、
AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)やAMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行搬送ロボット)といった搬送ロボットの導入が効果を発揮します。工場でAGV・AMRを導入するメリットや導入時のポイントなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。
構内物流の自動化
荷積み・荷下ろし、検品、保管、ピッキング、各工程間における搬送など、
人手で行っていた構内物流の工程をロボットやシステムを活用して自動化することも重要です。先にご紹介したAGV・AMRのほかにも、ピッキングの効率化を実現するデジタルピッキングシステムや、パレタイズを自動化するパレタイザーなど、さまざまなソリューションがあります。
構内物流の物流自動化を進めることで、省人化による人員コストの削減や生産性向上を実現できます。
物流自動化のためのソリューションや課題などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
搬送作業の省人化を実現するならLOGITO
第一実業では、製造業や倉庫業等の企業様向けに物流の自動化を図るソリューションサービス「LOGITO」を提供しています。工場内の現場分析から機器・設備のコーディネート、据付後のアフターフォローまでワンストップでご支援しており、国内外のグループ会社との連携により迅速かつ最適なソリューションを提供することで、工場内の搬送作業における省人化を効果的に実現します。
工場省人化の事例
ある工場では、400種類を超える通い箱に入れられた部品が日々納品されており、部品を生産ラインに払い出した後の空になった通い箱をサプライヤーへ返送しています。そのための仕分け作業を人手で行っており、ピーク日には毎日30,000箱もの空き箱を10名で仕分けなければならず、多大な労力がかかっていました。
そこで
自動倉庫やAGV、パレタイズロボットを導入し、省人化を実現。作業に必要な人員を10名から3名にまで削減できました。以下の資料では、物流自動化を実現するための進め方などを詳しく解説していますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。
LOGITO 運営事務局
LOGITO 運営事務局では、全世界17カ国34拠点のグローバルネットワークにて培ったノウハウを生かし、物流自動化に関するトレンド・業界動向からノウハウ、成功事例まで、物流自動化の実践に役立つ様々な情報をお届けします。